古事典等総論[イニシエブミドモノスベテノサダ]1
前御代の故事志るせる記ハ.何連の御代のころより有曽免毛無.書記
……と書き出されます。
木居宣長謹撰 古記典等総論[イニシヘブミドモノスベテノサタ] 前御代の故事しろせる記は、何れの御代のころより有りそめけむ。書紀〔日本書紀をいふ。傳の中みな然り。〕の履中天皇御巻に、四年秋八月、始之於諸國置國史記言事、と有を思へば、朝廷には是よりさきに、既く史あリて、記されけむこと知られたり。そはその時々の事どもこそあらめ、前代の事などまでは、如何有けむ知ねも、既に當時の記されたらむには、往昔の事はた、語傳へたらむまにく、かつがつも記しとどめらるベき物なれば、其比よりぞ有そめけむ。かくて書紀作撰しめ給ひし頃は、古記ども多く有つと見之たり。〔彼神代巻に、一書とて取れたるが多きをもて知べし。〕小治田宮に御宇し天皇の御世、二十八年に、聖徳太子命、蘇我馬子大臣と共に、天皇記及國記、臣連伴造國造百八十部、并公民等本記を録し給ふと書紀にある、是ぞ其事の物に見えたる始には有ける。云々
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