『ああ』と言う言葉 嗚呼についての説明が三の巻に有る。
書かれている場所は[四十四葉]1
読みながら連想した事が2つ有る。
● 其の一 高校の時のライバル校の校歌
「あなーとおーと あなーうるーわし とよーさかのーぼる あさーひのひーかり」
「あな貴 あな麗し 豊栄登る 朝日の光」と言う文句と思っている。2
嗚呼 = あな
とよ (三十五葉に 「豊は物の多(さわ)にして……」と有る)
一高二高両校の野球の定期戦が伝統の早慶戦の如く毎年実施されている。
母校が勝利して歌う校歌が短いのに対し、相手高の二高が勝利したとき聴かされる歌はとても長い。
しかしこの長い事を想うより、賛美の文句、美しい歌の歌詞が羨ましかった。
● 其の二 沖縄の『おもろそうし』の中の詞である。
天に響(とよ)む大主
明けもどろの花の
咲いわたり、あれよ
見れよ、きよらやよ
地天響む大主
明けもどろの花の
咲いわたり、あれよ
見れよ、きよらやよ (七の三十五)
- もう一つ『おもろそうし』(十の二十四)
ゑ、け、あかる 三日月や
ゑ、け、かみぎや かなまゆみ
ゑ、け、あかる あかぼしや
ゑ、け、かみきや かなままき
ゑ、け、あかる ほれぼしや
ゑ、け、かみか さしくせ
ゑ、け、あかる こちくもは
ゑ、け、かみか まなききおび
太陽の昇る有様が目に見えるようである。
もう一つの『おもろそうし』では月や星の天に輝く様子が目に浮かぶ。3
歌のリズムがどの様に読まれるのか想像出来ないのが残念であるが、
ことばの力強さを備えた、この美しい文が想い出された。
頭の中でこれらの事を整理していたら、灰谷氏の書いた『太陽(てだ)の子』を想い出した。
丁度身近に沖縄出身の若者が居たので[太陽(てだ)]をどの様に発音するのか聞いてみた。
確かに活字にすると[てだ]という風になるのかも知れないが、「て」も「だ」も少し響きが異なるし
リズムも考えていた日本語とは違った。
本居宣長の注釈にも「ここは上声で読む。次は異なる」と、
古(いにしえ)の「ことば」の読みに関する事が細かく指摘されている。4
阿夜訶志古泥神(あやかしこねのかみ)
阿夜は驚いて嘆(なげく)声なり
咄嗟を夜阿とも阿夜とも訓(よ)メ里 ……
凡て何事にまれ、心に深く思はるることなれば、
長き息をつく是れ則ち那宜伎(なげき)なれ。……
Footnotes